最近すげぇムカつく事がある
俺の知らない間に何があったのか、そんな事はどうでもいい
だけど明らかな変化にすげぇイライラすんのは事実



先輩、俺持ちますよ」
「あ、ホント?じゃあ、に渡してくれる?」
「了解っス!」



膨らませたガムがパチンと割れる
バシバシと揺れる尻尾はどっちに対してのものなのか、さっさとの所に行かない所を見ると答えは明白だ



「ブン太、次はボレーの・・・って、おい、ブン太?」



ジャッカルの声もスルーしてラケットを肩に掛けたまま近づく
二人の横から近づいて、そのままぐいっと肩を抱き寄せるように横から抱き締めれば赤也のギョッとした顔



「なに、休憩はまだ早いんじゃない?」
「疲れたから補給」



赤也を見ないまま首筋に顔を埋めて答えれば
返ってくるのは甘い声でもテレた声でもないけど、俺的にはそれで十分



「ドリンクはだって何度も言ってるけど?」
「ドリンクじゃなくて、を補給してんの」
「頭大丈夫?」
「うっわ、つめてぇ女」



ぎゅっと抱き締めれば上がるのは不満な声
それでも構わずくっ付いたままの俺をジッと見てる赤也の視線を感じる
どんな顔してんのか気になるけど絶対顔は上げてやらない



、また洗濯?」
先輩」
「「・・・」」



赤也と声がかぶった事にイラッとして回した腕の力をキュッと込める
ぐえってお前、もうちっと女らしい声出せよ



「・・・っは・・・切原、なに?」



もぞもぞと動いて苦しさから少し開放されたらしいは、俺じゃなくて、この俺じゃなくて赤也の名前を呼ぶ
なんで俺じゃなくて赤也なんだよ
ここは普通、俺から聞くもんじゃね?



「なぁ、
「うるさい丸井、黙って」
「・・・(うるさい?俺はうるさくて、赤也はうるさくないってか?)」
「切原、なに?」
「あ、いや・・・後で、いいっス」
「そう?じゃあ後で聞くから、それお願いね」



はいはい、丸井は邪魔だから離れて
そんな言葉と共にベリッと剥された俺はムッとしたまま、さっさとコートを出てく背中を睨む
背中に感じる赤也の視線
振り返れば、俺をジッと見つめる赤也の視線が俺とバッチリ重なる



「赤也、まだいたのかよ」
「・・・丸井先輩、なんスか今の」
「今の?」



何の事でしょう、とぼける俺にますます赤也の顔はしかめっ面になる
いつの間にの名前呼んでんの?
先週と態度違くね?
色々思う事はあるけど口にしないまま、ラケットを軽くトントンッと自分の肩の上で弾ませる



先輩はあんたのものじゃないでしょ」
「・・・はぁ?」



何言ってんのコイツ
だからってお前のものでもないだろ、そう込めた視線を赤也はどう取ったのか



「何勘違いしてるか知らないっスけど、俺が好きなのは先輩ですから」
「勘違いなんてしてねぇけど?」
「ならいいっスけど。じゃ、俺は行くんで」



クルッと俺に背を向けて、タオルの入ったカゴを持った赤也は真田の隣にいるに向かって早足で駆け寄る
その背中が俺に何か言いたげなのは気のせいじゃない



「なんだ、あいつ」
「それはお前さんの方じゃなか?」
「・・・おい仁王、後ろから行き成り顔出すなっつーの」
「何をそんなにイライラしとる」
「別に?」



横に立つ仁王を横目で見上げれば、その視線はと話す赤也に向けられてる
こいつも何考えてんのかサッパリわかんねぇ



「そんなに妹ちゃんが取られるのが嫌か?」
「はぁ?ちげぇし」
「そうは見えんけどのぅ。今のブンブンは、赤也に嫉妬してるぜよ」
「嫉妬?まぁ、そうかもな」
「ほぅ、認めるんか?」
「別にお前が考えてるような嫉妬じゃねぇよ」



これは恋愛どうこの嫉妬じゃない
これが嫉妬だとするなら、今まで見向きもしなかった癖に行き成り馴れ馴れしい事への嫉妬であって
それ以上でもそれ以下でもない



「嵐の予感じゃ」
「あほか」



俺がを好きだと勘違いしたのか、それともわざとそう仕向けて楽しむ気なのか
明らかに後者だろう仁王はニヤリと笑ってコートに戻っていく

そんなわけがない
ってか、それはありえないとフッと笑みが零れた



「俺が好きなのはあいつじゃねぇっつーの」



仁王が聞こえなかったのか、なんか言ったか?と振り返る
何でもない、そう言って俺はジャッカルが一人寂しくぽつんと立つコートに戻っていった

小さな、けれど大きな変化

>> next story