常に成績は学年トップをキープ
10人中10人が選ぶだろう欠点のない容姿
どんなスポーツもすぐに自分の物にしてしまう運動神経
老若男女、誰に対しても優しく時に厳しく人当たりも良し

誰が呼び始めたのか“高嶺の花”と呼ばれるその先輩は、気取る事もないし、モテる事に対して鼻高々になるわけでもない
だから余計に女からの人気も高いんだと思う
欠陥なんてない、完璧がまさに歩いてるような先輩は、例外なく俺も憧れる



「赤也君」
先輩!」
「次はBコートで雅治君とだから、アップしておいてね」
「了解っス!」



にっこり微笑んで、頑張ってね、と応援してくれる先輩
その手にはスコアボード
それは全校生徒が羨むだろう、先輩がこのテニス部のマネージャーの証拠
先輩目当てに入部者が殺到するほどの人気に、何度副ブチョがブチ切れた事か



「赤也だけ応援されるとは、ちとズルイんじゃなか?」
「っうわ!ちょ、行き成り後ろから現れないで下さいよ!」



独特の訛りはこの部で一人しかいない
数歩飛び退いて振り向けば案の定、わざとらしく傷付いたような顔をした仁王先輩



「雅治君の事も勿論応援してるよ?」
「こんなちんちくりんの応援なんてせんでよかよ。俺だけ見てんしゃい」
「ちょっと仁王先輩!?ちんちくりんってなんスか!」
「ピヨッ」
「ふふ、応援してるから二人とも頑張ってね」
「当然っスよ!俺、マジで仁王先輩潰すんで見てて下さいよ!」
「潰されるの間違いじゃ。、後でドリンク頼むきに」
「うん、持って行く。じゃあ、弦一郎君が怖い顔してるから戻るね」



ベンチ横に立ってジッとこっちを睨む副ブチョにチラッと視線を送って
応援の言葉を忘れずに先輩は足早に仕事へと戻っていく
何だかんだ言っても副ブチョだってジッと睨むだけで怒鳴らない
それは副ブチョだって先輩の事が好きだからだ



さん、後でこちらにもタオルを持ってきて頂けますか?」
「比呂士君、お疲れ様。うん、蓮二君の分も持ってくるね」
「あぁ、頼む」



俺や仁王先輩、副ブチョだけじゃない
誰もが先輩の笑顔に癒されて、何かって言えば声を掛けて構う



、俺って次はナシだよな?」



たった一人、丸井先輩だけは先輩に対してマネージャー以外の感情は持ってない



「ジャッカル君はDコートで弦一郎君とだから、ブン太君は休憩に入ってくれていいよ」
「俺は続いて真田かよ・・・」
「ま、頑張れジャッカル!」



バシッとジャッカル先輩がよろけるくらいの力で肩を叩いて
せっかく先輩が差し出そうとしたタオルには目もくれず、いつの間にかコートに入ってきたもう一人のマネージャーに駆け寄った
先輩はそんな丸井先輩に気を悪くするわけでもなく視線だけをそっちに送って微笑む
それがまた大人で、先輩の魅力を俺達に焼き付ける



、タオルは?」
が渡したでしょ?」
「もらってない」



もらってない、じゃなくて受け取らなかったんだよアンタは
そう言いたくても声を挟むには少し距離があって口を噤む



「また?」
「俺は消費が激しいから早く休みたいんだよ」
「だからって裏方のあたしにタオル強請ったって無駄」
「マネージャーだろぃ?タオルくらい用意しとけ」
「マネージャーでも裏方はキャンガルしません」



ズバッと切り捨てるもう一人のマネージャー
無造作にアップにされた黒髪に、赤い縁のメガネといった風貌のその先輩は
容姿も成績も正確も至って平々凡々、というか女特有の優しさっつう柔らかさは皆無
別にブスでもないし、言いたい事はハッキリしてるし、嫌いじゃない
むしろ友達としては気が合うだろうタイプ



ちゃん、ドリンクの追加お願いしてもいい?」
「やっぱり足りない?」
「そのボックスで終わりだから、少し足りないかな」
「そっか。うん、だと思って今日は余分に作ってあるから」
「本当?さすがちゃん、後で取りに行くね」
「持ってきてあげたい所だけど洗濯終わるから、ボックスに移しとくね」
「うん、ありがとう」



二人並べば知らない男だって比べるだろう先輩と先輩
知ってるからこそ立海の生徒は誰もが二人を比べて、誰もが同じ言葉を口にする
この二人が双子だって言うんだから、血の繋がりっていうのは本気で当てにならないと思う



「・・・ホント、先輩と先輩って似てないっスよね」
「双子言うても二卵性じゃけん。一卵性と違って個性が強いんじゃよ」
「へぇ、そうなんスか」



それにしたって似てなさ過ぎる
顔のパーツひとつにしたって似てないし、声も似てない
おまけに普通の姉妹でさえ後姿が似てたりするのに、一度だって間違えられた事はないって先輩が言ってた



「ま、あの二人は似てなくて当然じゃ」
「え?当然って、まさかホントは橋の下の子ってオチとか?」
に聞かれたら泣かれるきに、声抑えんしゃい」



その切り返しはマジで?と顔に出てたのか、仁王先輩はククッと嫌な笑い



「・・・からかわないで下さいよ!一瞬信じちゃったじゃないっスか!」
「誰もそうだとは言ってなかよ」
「アンタの反応は曖昧すぎなんスよ!」
「ほれ、そろそろ行かんと真田に怒鳴られるぜよ」



完全に答えをはぐらかされた
問い詰めたところでこの先輩が口を割るわけもなく、コートから後ろに丸井先輩をお供に出て行く先輩をチラッと見てから
似てなくて当然、そんな仁王先輩の言葉を頭の隅にそっとしまいこんだ

(二人のマネージャー)

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連載予定とはまた別の突発的連載になります
トップにも書いてありますが、かなり変わった嗜好であり常識外の出来事が普通に起こる&起こっています
これを夢小説として書いても良いのかと思える程に・・・!
完全に自己満足の作品、ってやつですのでご了承下さい><