零が吸血鬼を恨んでるのは知ってた
枢センパイが会いに来てくれた時の、憎しみに染まった零の顔を今でも覚えてる
ずっとずっと、憎むべきだと、心を許すべきじゃないと、そう零は言っていた
だけど零はどんな気持ちだった?
この4年間、いつ自分が吸血鬼になるかわからず怯えていた?
苦しんで、たった1人で何を思ってた?
――― ・・・零、言ってくれなきゃわからないよ・・・っ
怖いかと聞かれたら、首を横に振る事は出来ない
だけど私は、零と離れたくない・・・っ!
「待ってよ・・・っ零!!」
小さなバックひとつ肩に掛けて、学園を出て行こうとする零を呼び止める
右手に重く存在を主張する零の銃
まだ血が足りなくてふらふらしながら、それでも零を止めたくて震える腕を必死に持ち上げた
「――――― ・・・肩を痛めるからやめろ。・・・離せ、優姫」
「・・・このまま黙って行かせるのは、私が嫌だ!」
あの日からずっと傍にいた
気づけなかった、零が苦しんでる事に・・・
「・・・俺はお前を "喰おう″とする自分を止められなかった」
思わず左手で首筋を押さえた
まだほんの少し痛む咬み痕は、零が私の血を飲んだ証拠
私を見下ろす零の表情がぐにゃりと歪む
銃口を掴んだ零の右手
ゆっくりと自分の喉元に銃口を突き付けた
「次に "獲物″にした人間を、俺は殺してしまうかもしれない。 ――― ・・・撃てよ、本当は俺が怖いんだろう・・・?」
どうして、そんなに傷ついた顔をするのに本音を隠すの・・・?
私から一歩一歩離れる零
「吸血鬼を殺しても罪にはならない」
零は私に背を向け歩き出す
私は、確かにこの4年間傍にいたのに何もわかってなかった
零はいつだって私の変化に気づいてくれたのに、私は何ひとつ気づいてあげられなかった
だけど、私は ――――― ・・・
「何もわかってなかった。だけど、4年間零を見てきたよ・・・?だから、怖くない。零の事、怖くない・・・っ」
いつの間にか、こんなに大きくなった零の背中
そんなに自分を責めなくてもいい
私は、大丈夫だから
怖くなんてないから
「――――― ・・・ "次″は止めてあげる。・・・次、またそんな時が来たら・・・零が止めて欲しいって思うなら、私が止めて上げる・・・・っ」
私に背を向けている零の表情は見えない
だけど、私を振り払う事はしなかった
私はいつだって零の味方だから
零が、いつだって私の味方でいてくれるのと一緒だよ
零が吸血鬼だってそれはかわらない
この先、何があってもかわらないから・・・っ