もう一度あの日に戻る事が出来るのなら
さよならがわかっている幸せな日々 と 変わらない毎日
僕はどちらを選ぶんだろう
――――― 答えなんて、わかってる癖に迷う自分も否定出来ないんだ
Love can move mountains. No.05 これは罪深い事なのだろうか
「おまえ、男拾ったってホントなのか?」
「・・・その言い方嫌なんだけど」
「じゃあ 【男拾ってペットにしてる】 ってホントなのか?」
「変わってないから、むしろ悪くなってるっての」
キャラメル色の液体の入ったグラスを傾けながら、は隣に座る男を睨むように見た
おぉ怖い怖い!と降参とばかりに両手を挙げて笑う男には溜め息ひとつ
「結構広まってる?」
「少なくとも、今日の練習中にイライラ度数MAXでリーダーに怒鳴られてたあいつには伝わってるだろうな」
「・・・冗談でしょ?」
「冗談なら俺は今頃、腐れ縁のおまえじゃなくてファンの女と楽しんでるっつーの」
勘弁してよ、とは長い髪を掻き上げた
厄介な人間にバレてしまったと、このまま何事もなく過ぎ去ればいいが嫌な予感がする
もう揉め事には関わりたくないとグラスに残っていた液体をグッと一気に飲み干した
「イイ飲みっぷりだな、相変わらず」
「・・・アギト」
「なんだ?」
空になったグラスを置いて、中に入った氷で遊ぶようにグラスを傾ける
小さく流れるクラシックの曲に混じり微かに聞こえる氷の音
はただそれを見つめ、チラリと隣の男・・・アギトに視線を流し、自嘲的に口元を歪ませた
「・・・――――― なんて、最低だよね」
「あ?聞こえねぇよ、なんだ?」
「・・・なんでもないよ」
聞こえなくて良かったのかも知れない、とはグラスを置いて席を立った
帰るのか?とアギトの問に振り返らず片手を挙げて、照明の暗い店からキラキラと夜だというのに煌びやかな街へと出て行った
用事があると言って出て来たが、あまり遅くなるとまずいだろうとは止めてあった車に乗り込んだ
+++
住み慣れたとは言い難い、3年間過ごした家の前に車を止めて
まだ部屋の明かりが点いている事を確認して、手にはジェームズに買ったお土産を持って車から降りる
センサーに手を翳してドアを開け中に入ればソファーに座るジェームズの背中が見えた
「ジェームズ、ただいま。お土産買ってきたよ」
「・・・っうわ!!!」
「な、なに!?」
これといって脅かしたわけではないのに、酷い驚きように逆に声をかけたは後退る
慌てて立ち上がったジェームズはパシパシと数回瞬きをした後、驚いた事に気まずいのか、多少引き攣った笑みでおかえりと口にした
「大丈夫?」
「あ、あぁごめん。少し考え事をしててビックリしただけだから」
「そう?あ、これお土産」
「お土産?」
ぽんっとジェームズに渡して、は着替えてくるといってリビングを出て行く
さっそくガサガサとお土産の袋を開いたジェームズの歓喜の叫びが、寝室で着替えていたの耳に届き思わず吹き出した
部屋着に着替えてリビングに戻れば、せっせとほくほく顔で紅茶を淹れるジェームズがいた
「今から食べるの?」
「もちろん!据え膳食わぬは男の恥っていうからね!」
「それ意味ちょっと違うけどね」
クスクス笑って、はソファーを背にしてふわふわの絨毯の上に腰を下ろす
おまたせ!と待ちきれんばかりの笑顔で紅茶を運んできたジェームズは迷わず隣に座った
いつもなら向かえ側か、角を挟んだ隣に座るのに、と軽く目を見開いただったが
隣で犬のように待てをしているジェームズに小さな疑問は吹き飛んだ
「食べよっか?」
「はどっちだい?」
「ジェームズはどっち?」
箱の中には2つのケーキ
チョコとマロンの2つのケーキを、お互い聞き合うが譲らない
「ジェームズが選んでよ」
「ここはレディーファーストさ!、どっちがいい?」
「たまにはレディーファーストの逆もいいでしょ?ほらジェームズ、選んで?じゃないと、どっちも食べちゃおうかなぁ」
「わわ!だめだめ!じゃあ、僕はマロンにする!」
「あはは!じゃあ、あたしはチョコね」
慌てるジェームズには笑って箱の中のケーキをそれぞれのお皿へと乗せた
テレビを見る気分じゃないとは音量を小さめにして曲を流す
ふと、隣から視線を感じて振り向けば、ジェームズがジッとを見ていた
「・・・ハィハィ、こっちも食べてみる?ほら、あーん」
待ってましたと口を開けたジェームズの口の中にケーキを放り込んむ
こっちも美味しい!と、いつも思うがジェームズの反応は少し大袈裟だ
「もほら、あーん」
「・・・いやあたしはいいよ」
「なんでだい?こっちも美味しいよ!ほら、口開けて」
「・・・・」
恥ずかしい事だと思わないのか?とは戸惑いつつ口を開けた
満足そうににっこりと美味しい?と聞いてくるジェームズに頷いて、本当に16歳?と不思議に思わずには居られなかった