さよならが、すぐ傍にあるとわかってた
限られた時間しか一緒にいる事が出来ないと、初めからわかってる事だった
それでも育ち始めてしまった気持ちをむしり取る術を僕は知らない

Love can move mountains.    No.04 見るもの、触れるもの、全てが新鮮

!これは?」
「それはパソコンって言って、文字を打ち込んだりデータを保存したり、世界中の情報を検索できたり、説明するのに1日は軽く過ぎちゃうよ」

!パソコン?を小さくしたようなこれは?」
「それは携帯電話って言って、離れた所にいる人と会話したり、メール・・・文章を送りあったりするものだよ」

!この大きな鉄の箱はなんだい?」
「それは冷蔵庫。生ものとか冷やして保存する物を入れておく所。一番下が、凍らせておきたい物を入れるんだよ」

!この透明な瓶のようなものは?」
「それはペットボトルね。ジュースとか水とか、飲み物がそれに入って売ってるんだよ」

!」
「あぁもう!お願いだから大人しくしてよジェームズ!興味を引くのはわかるけど、これじゃあ買い物も終わらないでしょ!」



ポツポツとの一歩後ろを歩く僕は、さっき怒られた事で質問する権利を奪われてむずむずと気持ちが悪い
気になるものが多すぎる
と僕の着替えを買いに行く事になったのはいいけれど、見るもの全てが新鮮だった



「・・・ジェームズ、落ち込まないでよ」
「落ち込んでるわけじゃないよ。ただ、口を開くとまた質問してしまいそうなだけさ」



マグル学はリリーが選択していたから僕も当然受けていた授業だ
だけど、マグル学で勉強した事なんて全てが無駄になる程にこの世界は違いすぎる
なんと言っても魔法を使わずに人が宙を歩いているんだから!
に聞けば、透明な道がそこにあるらしく、僕は真っ先にそこに行きたい!と主張してみたが綺麗さっぱり却下されてしまった



!」
「ハィハィ、なぁにジェームズ」
「僕はあれが食べたい!」



そう言って僕が指さしたのは、甘い匂いが漂う屋台のような店で売られている変わった食べ物だった
美味しそうに食べる人を見ると食べて見たくなるのが人間の好奇心
呆れたように僕を見て、それでもそのお店に向って歩くは優しい



「ジェームズ?いらないの?」



店先に立ち僕を振り返るに僕は慌てて駆け寄った
近づけば更に甘い匂いが鼻をかすめ、リーマスが喜びそうだとメニューらしき物をに渡される
たくさんの写真が載ったそれは僕が見てもわからない



「どれがいい?」
「どれが美味しい?」
「あたしはシンプルにチョコバナナ」
「これかい?」
「そうそれ。ジェームズ、これにしてみなよ。ツナとキムチの生クリーム風味」
「ふんふん、じゃあ僕はこれで!」



店員さんらしき女の人にそう伝えて、僕とは店先に立ったまま出来上がりを待つ
が何故か引き攣った笑みを浮べたけれど僕の視線は店員さんの手元に釘付けだ
黄色い生地の様な物を平たい鉄の上に薄くのばして、あっという間に焼けたそれを引っくり返して、別の台へ
そこへ生クリームとバナナ、チョコを乗せてくるくると巻く店員さんの手付きは素早い



「お待たせしました、チョコバナナです!」
「ありがとー」



受け取ったはやっぱり女の子で、甘い物が好きなのかいつもよりも笑顔だった
すぐに僕の分も出来上がって、そのまま立って食べるのも行儀が悪いと僕は思ったけれど
なんだか歩きながら食べるのが普通らしく僕はちょっと戸惑いながらもに続いて歩きだす



「久々に食べたよ、クレープ」
「くれーぷ?これの事かい?」
「そうだよ。簡単に言えば小麦粉と水を混ぜて焼いた生地に、好きな物を乗せて巻いたデザートかな」
「変わったものが多いね、この世界は」
「いやこれはあたしの世界にもあったから、ジェームズの世界にもあるんじゃない?」



マグルの世界に行った事がない僕はわからなくて、そうなのかな?と首を傾げた
ドキドキと緊張しながらぱくっとクレープと呼ばれるそれに食いつく
甘みの中に辛さが広がって、うまい!とまた叫んだ僕をは驚いたように目を見開いた



「どうしたんだい?あ、食べてみたいって?」
「いやいらない。あたしキムチ嫌いだから」
「そう?残念だな、とっても美味しいよ!」



よかったね、と笑うに小さく心臓が跳ねる
誤魔化すようにの腕を掴んで、僕とは違うクレープにぱくっと食いつけば
僕のクレープとはまったく違う、甘くてほんのりチョコの苦味が広がった



「こっちも美味しい!、またあのお店でクレープを買おう!」
「今度ね、今度」



あのテラスから見えた大きな都市
確かに、と何も知らない僕が頷ける程に人が多くて、きっと僕の世界にはないだろうものがたくさんある
シリウス達にもお土産を買っていこうと、のお金だけれどまあいいやと僕はクレープに食いついた





+++




「服も買ったし必要な物はこれくらいかな」
「荷物はどうするんだい?」
「運んでくれるから大丈夫だよ。ジェームズ、クリスタルロード、行って見る?」
「いいのかい!?」
「まだ時間はあるし、あそこのエレベーターから上に行けるから。行く?」
「もちろん!」



思わずの手を取って走り出した
戸惑うようなの声が聞こえたけれど僕はそれよりも早くクリスタルロードを歩いてみたくて、が言っていたエレベーターに乗り込む



「子供みたいだね、ジェームズ。16歳には見えないよ?」
「空中を歩くなんて箒で空を飛ぶよりも凄いじゃないか!」
「いや空中じゃなくて、見えない道を歩くだけだよ?」
「それでも凄いよ!あ、ついた!、早く早く!」



エレベーターに乗って一度離した手をもう一度握って走り出す
すぐ目の左右の青い手すり以外は何もないように見えるそこは、僕が一番初めに行きたいと言ったクリスタルロードだ
手前で立ち止まってドキドキしながら足を前に出す
確かに道はそこにあるとわかっていても不安でゆっくりと足を下に下ろせば、確かに足は何かに当たったのに音がしない
試しに強く足を付けてもまるで本当に空中を歩いているかのように、ふわりとした感覚だけが足から伝わる



・・・凄いよ・・・凄いよ!」



地面を歩いている感覚はない
本当に、一歩一歩がふわりとした感覚で、慣れない僕は上手く歩けない
シリウス達にも味合わせてあげたいこの感覚
が呆れたような笑みを浮べていた事に気付いたけれど、僕は興奮が収まらなくてはしゃぎまわった



「この世界は凄いね
「あたしの元いた世界よりもずっと文明が発達してるから、あたしも初めてこの街に来た時は驚くことばっかりだったよ」



少しは慣れた僕と、普通に歩くは手を繋いだままクリスタルロードを歩く
街中に通っているらしいこの道は出口まで歩きたいと僕のワガママをが聞いてくれたからだ



「でも、箒で空を飛ぶ事の方が凄いと思うけどなぁ」
「そうかい?」
「こんな道はさ、技術があれば世界中の誰にだって出来るけど、箒に乗って空を飛べるのは、魔力を使える人だけでしょ?」
「そう言われればそうだけど。・・・あ、!」
「ん?」
「乗せて上げるよ!家に帰ったら、箒で空中散歩に行こう!」
「ほんと!?」
「あぁもちろんさ!は僕のワガママを聞いてくれたからね」



魔法がこの世界でも使える事は確認済みだ
僕のワガママを聞いてくれたにお礼としては小さいかもしれないけど
それでも喜んでくれたに、僕も何だか嬉しくなって、握った小さな手に少しだけ力を込めた











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