突然現れた少年は、くしゃくしゃな黒髪に眼鏡をかけた少し変わった少年だった
ちょっと変態チックな少年の名前はジェームズ・ポッター
真面目で器用かと思えば、ドジな所もある見ていて飽きない楽しい男の子

色のなかった生活に、たくさんの色を添えてくれた

Love can move mountains.    No.03 全てを忘れてしまいそうになる

太陽系から約150光年離れたアウェルシャオン星系、第五惑星クラウン、LV-203、エリア56
それが今、僕がいる場所らしい
よくわからないけど、ここが地球じゃない星だという事だけは理解出来た



「ジェームズ、書くのは日記じゃなくてSOSだよ?大丈夫?わかってる?理解出来てる?書いてあげようか?ん?」
、いくら僕でもそんな幼児に言い聞かせるように言わなくてもわかるさ!」
「じゃあその手元に溢れる便箋約25枚はなに?真面目に書く気がないなら、今すぐベルトラインに捨てるよ?」
「うん、これは下書きで今から本番を書こうと思ってた所だよ」
「そう?ならいいけど、日が暮れるまでには書き終えてね」



にっこりと、某甘党の友人を思い出すような笑みでキッチンへ消えるの背中
怖い
某甘党友人の絶対零度の笑みを今なら軽く冗談で流せる自信がふつふつと沸きあがる程、のあの笑みは怖いっ!
せっせと書き連ねた便箋をぐしゃぐしゃにまとめてゴミ箱へ投げ捨てて
綺麗な新しい便箋に、慣れないペンで一行だけ僕は今の思いを書き殴る

    ――――― HelpMe!!

書き終えてすぐにこんな物を見られたらまた遊んでると思われる為すぐにゴミ箱に捨てて
簡単な状況説明と、どうにかして欲しいという願いを書いた便箋を封筒の中に押し込んだ



「ふぅ、これでよし!」



届く確率は、聞いた時には絶望的なんじゃないかと思える数字だったけれど今はこれしか方法がない
も情報網を使って調べてくれてる
この手紙をどうやって僕の世界の、あのホグワーツに届けるのかは説明してくれたけれど理解出来なかった
この世界はあまりに僕の生まれ育った世界とは違いすぎて、理解出来ない事が多いけれど逆に、興味を惹かれる事が溢れてた



「あ、
「紅茶でいい?」
「あれ?いつもの葉と違うのかい?」
「たまたま目に入ったモニターで新発売!って出ててね、ついつい頼んじゃった」



ふわりと香る不思議な香り
不味くなかったからアタリだね、と笑うにつられるように僕の頬も緩んでいく



「いつまでもその格好で居るわけにもいかないし、明日買い物にいこっか」
「本当かい!?」
「う、うん。明日か明後日か、いつかわからないけど、ずっとあたしのスウェットでいるわけにもいかないからね」
「あぁどうしよう!今日は僕、興奮して眠れないよ!」



この世界に流れ着いて1週間
この家から出る事がなくて、ただテラスから眺めるだけだった夢の様な街並み
そこへ行けるなんて!と僕は思わず立ち上がってテラスへと出た



!あの、空の道にも行けるのかい?」
「一応車もあるし行けるけど?」
「じゃあ行こう!後は、あの水の中の道と、あの街を架ける道にも!」
「ふふ、そうだね。明日はドライブしながら、色々回ってみよっか」



まるで魔法でも使っているような街並みは、行けるとわかれば尚更興奮せずにはいられない
透明な筒の様なもので出来た空の道
海の中を通る道に、キラキラと光り輝く街に架かる大きな道
見た事もないものばかりの街に行ける
そう思うだけで、僕は心臓がドキドキと音を立てて速くなる



「でもよかった」
?」



部屋の中から出てきて僕の隣に並び、白い手すりに寄り掛かりカップを持ったまま
なにがだい?と聞いた僕に、は少し目を伏せてから



「・・・今は煌びやかな大都市だけど、つい数年前までは戦争をしてたから」
「せ、んそう・・・?」



予想もしなかった言葉に僕は手すりを掴む両手を離して横を向いた
かしゃん、とのベルトが手すりに当たって小さく音を立てる



「戦争っていうか、この世界に生きる人達って2種類に分けられるんだけど、その人達が争ってたから」
「え?争ってたって・・・」
「まあ、今はもう落ち付いて平和だから心配しないで?」
「・・・」



僕は不謹慎、かもしれない
両手で包み込むようにカップを持つ手が震えている事に気付きながら
僕を見て、目尻を下げて儚い笑みを浮べたに、思わず見惚れてしまった



・・・あの・・・」
「嫌だよね。どの世界にも、どの時代にも、子供同士の喧嘩が絶えないと一緒で、大人の争いもなくならない」
「・・・」
「悪い事だって、失う事で誰もが悲しむのに、人はわかっていて繰り返すんだよね。平和に見えても、どこかで ――――― ・・・っ」



泣きそうに、それでも言葉を続けようとするを、僕は思わず抱き締めた
ガシャンッ!とカップの割れる音が遠くで聞こえた気がした



、もういいよ」
「・・・ジェ、・・・ムズ・・・?」
「そんな辛そうな顔をする理由は僕にはわからない。だけど、そんな顔見たくないんだ」



腕の中で小さくの肩が揺れる
何があったのか、まだ1週間しか共にいない僕にはわからない
だけどにとってその何かが、辛く悲しい思い出に繋がる事だけはわかる



「泣くななんて言わない。無理して笑おうなんて言わない。だから、思いっきり泣いて、その後にはちゃんと笑って?」



この1週間頼ってきたは、思っていたよりもずっと小さくて
僕の腕にすっぽりと収まる
僕よりもずっと大人で、落ち付いているけれど

は、僕とは違う
どんなに大人っぽくても
どんなに落ち付いていても

女の子なんだと、腕の中で小さく声を漏らすを抱き締めながら静かに思った











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