「・・・シリウス、君の家の力を使って良い病院を紹介してあげられないかな?」
「・・・ブラック家に頼るのは癪だけど、ここまで来ると憐れ通り越して惨めだな」
「なんだいシリウス、リーマス!信じてないね?その顔は!」
「1日君の夢物語を聞かされた僕達の身にもなって欲しいよジェームズ」
「夢の話をリリーに報告してビンタされたって、マジで笑えないだろ」
「壊れてるっていうよりもおかしいよ。シリウス、どうにかしないとこのままじゃ幻覚まで見るようになるよ」
「良い病院の手配は任せとけよリーマス」
「あぁもう!!シリウスもリーマスも、少しくらい信じてくれたっていいだろう!?親友じゃないか!」
「親友だから心配してるんだよジェームズ」
「頼むから、何もない空間に話しかけるような真似はすんなよジェームズ」
Love can move mountains. No.08 これが僕の物語の結末
今日、僕はホグワーツを卒業する
7年間過ごしたホグワーツを卒業するのはやっぱり寂しい
ここにはたくさんの思い出が、たくさんの想いがつまっているから
「ジェームズ!写真撮ろうぜー!!」
「あぁ!ちょっと待ってくれ!!」
遠くでシリウスの声がする
振り返ればリーマスやピーター
そして、リーマスの隣で昔よりもずっと綺麗になったリリーが微笑みながらリーマスを見上げてる
「レヴィ先生!写真撮ってくれよ!」
「おぉ、いいぞー」
「ジェームズ、早くしろよ!」
シリウスに急かされて近づけば、ぐいっとシリウスに肩を組まれる
無二の親友であるシリウスはこれから先も変わらず大切な親友だ
リーマスも、ピーターも、リリーも、これから先ずっと大切な友人だ
「おいリーマス、俺の前でいちゃつくな!」
「おや?自分が卒業間近に振られたからって僕にあたらないでほしいなシリウス」
「リーマス、それは言っちゃだめよ。シリウスが不甲斐ないせいで振られたんだから」
「・・・っお前達2人揃って傷を抉るな!!」
昔と変わった事はたくさんある
シリウスが女遊びをやめて、ちゃんと1人の女の子と付き合い出した
まあリリーが言ったように不甲斐ないせいで卒業間近に振られたけど
ピーターはあんなに苦手だった魔法薬学が、僕達の中で誰よりも得意になったし
なんと言ってもリリーとリーマスが付き合った事
「リリーも来るよね?」
「シリウスの家でしょう?リーマスが行くなら私も行くわ」
「よかった。でも、飲み過ぎないようにしないとね」
「明日は大切な日ですからね!私は大丈夫だけれど、気を付けてよ?リーマス」
明日、リーマスはリリーの両親に挨拶に行くらしい
結婚式も近いかなっとシリウスと顔を見合わせて笑った
+++
「ポートキーで移動するの?」
「面倒くさいからな。なんだよリリー、ポートキーは嫌いなのか?」
「あの感覚が嫌いなのよ」
「あぁ、あれは俺も嫌いだけど楽だろ?」
ホグワーツ特急を見るのもこれが最後だと思うと、何だか会話に参加する気になれずに僕は柱に寄り掛かった
列車が止まった直後は人が溢れ返っていたホームも
今は殆どの生徒が列車に乗り込んだ為にちらひらと人がいる程度
「ジェームズ」
「ん?なんだい、リーマス」
柱に寄り掛かっていた僕に、リーマスは輪から離れて声をかけてきた
相変わらず笑みを浮べたリーマスは何を考えてるのか、さすがの僕でも読み取れない
「これ、シリウスの家の住所。どうせ君はポートキーで移動しないんだろう?」
ほら、僕が予想もしない事を簡単に言ってのける
少し驚いて目を見開いた僕に、リーマスはシリウスの家の住所が書かれたメモを押し付けた
「・・・あの時は信じてなかったのに、どういう風の吹き回しだい?」
シリウスも、リーマスも、僕の話を信じようとはしなかった
おまけに人を病んでると騒ぎ立てたくらいだからね
「あの時は僕も信じてなかったよ。というか、今も信じてないけどね」
「・・・リーマス、今更否定しなくてもいいんじゃないかい?」
「あはは、ごめんごめん。だけどジェームズ、行くんだろう?」
その問に僕は答えなかった
答えるまでもないと、リーマスもわかっていると思ったから
「シリウス達には適当に言っておくから」
片手をあげて、僕は歩き出す
「結婚式には揃って出席してね、ジェームズ」
「・・・信じてない癖に良く言うよ」
小さく笑って、僕はホームを出た
この2年色々な事があった
たくさん思い出も増えた
だけど、君を忘れた事なんてない
ホグワーツに居た7年に比べれば、ほんの短い時間しか共に過ごさなかったけど
それでも君と過ごした時間は人生の中で一番の思い出で、大切な宝
さよならを告げたばかりのホグワーツは、しんと静まり返っていた
慣れた廊下を歩いて
自然と速度が上がる
僕が綺麗にした筈の空き教室は、もう掃除をする前の部屋に戻ってた
「ここから、僕の人生は変わったんだ」
あの時と変わらない、埃を被った暖炉
懐かしい
あの日から一度も足を運ばなかったこの場所
約束は、していない
僕を縛り付けたくないと、そう君は言ったね
けれどそれは無理なんだ
僕はあの日
君に出会った瞬間、もう君という暖かく優しい鎖に囚われていたんだから
君はどうしてるかな?
今も僕を、愛してくれている?
2年と言う月日は短い様で長い
不安は、ある
だけど残念
諦めなよ
僕は君を、手放す気はないって、そう言っただろう?
「 ――――― ・・・、僕は君を愛してる」
あの日から
こうしている今も
これから先、ずっと
だから、覚悟してね?
僕は君を、手放す気なんてないんだから
⇒ あとがき