オレの服を握った手が震えてた
泣きたければ泣けばいいのに、あの時みたいに泣けばいいのに泣かない
唖然と、求めるように呟いたその言葉に胸がチクリと痛かった



「支葵、彼女は寮に帰ったの?」
「・・・知らない」
「彼女も混乱しちゃった、んだろうね。・・・行き成り、僕達が・・・・。でも支葵、頑張ったね」
「オレ、何もしてないけど」
「枢を無視する程、彼女の事が好きなんでしょ?
「・・・好き?」
「そんな彼女に、君とは違うって知られるのは、僕にはわからないけど・・・怖いと思うからね」



一条さんはそう言って寂しそうに笑った
その言葉にオレは "何言ってるんだろ、この人″と少し上にある一条さんを見上げる



「好きじゃないよ」
「・・・え?支葵、彼女の事好きなんじゃないの?」
「なんかここ、痛いし。好きって、痛くないじゃん」
「・・・えぇっと、支葵・・・?」
「一条さんとか、莉磨とか、好きだけど、ここ痛くないから」



一条さんがぱちくりと目を丸くして、ズルズルと壁に手をついて崩れた
元々変な人だと思ってたけど今日の一条さんは特に変
スタスタと歩きだしても一条さんは何も言わなかったから、そのまま "誰もいない″部屋に戻った

(無意識に想う愛)

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(WEB拍手で公開していた作品!連載の方の番外編ですね)