僕の為に生まれて来た、この世界でたった1人の大切な娘
生まれた時から共に過ごし全てを捧げてきた
あの娘の為に僕は今ここにいると、それすらも疑わなかった
「枢様。元老院からの通知をお持ちしましたが、どうなさいますか?」
凛とした表情
あの娘とは違う、ハッキリと意志を持った力のある君の声
「・・・そこの机に、置いてくれる?」
「こちらでよろしいですか?」
「あぁ、ありがとう」
「いえ、それでは失礼します」
部屋を出て行く君を引き止めてしまいたくなるのは、あの娘への裏切りになるのだろうか
凛とした表情も好きだけれど、僕以外に向ける無邪気な笑顔が欲しいと思ってしまう
「英、お待たせ」
開け放した窓から聞える君の声
僕に向けられる事は決して無い無邪気な笑顔
――― 形だけの婚約者
この世界でたった1人、大切なのはあの娘の筈なのに
あの娘が生まれる前から僕は愛していたのに
「・・・君を愛してると言ったら、君は僕に笑いかけてくれるかい?」
君のいない所で何度想いを口にしても、君に伝わる筈はないとわかってる
それでも溢れる想いを止める術を僕は知らない
(行き場のない秘めた想い)
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