「・・・おい、支葵。いい加減に俺を無言で睨み付けるのはやめろって」
「別に、睨んでないし」
「あのなぁ・・・」



突き刺さるチクチクとした視線に耐え切れず文句を言えば、返って来るのは本気で言ってるのか無意識っていうのはタチが悪い
デイ・クラスのあいつは簡単に月の寮にはこれない
出待ち、というか人ゴミが嫌いなあいつがあの時間あの場所に来る訳が無い
って事は当然あの夜から支葵はあいつに会えていないんだろう、その不機嫌さが全て俺に向けられるのは勘弁して欲しい
しかも何でこんな時に限って支葵と組んで狩りに行かなきゃいけないんだ・・・



「・・・あんた、ムカつく」



ボソッと零れた本音に俺はギョッとして大きく横に飛んだ
途端にガッシャーンッ!と俺のすぐ後ろにあった窓が粉々に砕け散った



「支葵!!なにすんだ!」
「・・・別に、的が外れただけだし」
「レベル:Eはあっちだろうが!!・・・俺を攻撃したら、あいつが泣くぞ」
「・・・」



ピタッと支葵の手が止まる
どこまでも正直な癖に、無意識だからマジでタチが悪い



「・・・あいつを渡す気は、ないけどな ――― ・・・っおま!!」



俺の頬を掠った紅く生きたようなそれ
口元が引き攣ったまま支葵を見れば、知らぬ顔でレベル:Eにトドメを刺した
いつもよりもその横顔が吸血鬼らしいのは、俺の気のせいだと思いたい・・・



「オレ、先に帰る」
「あ、おい支葵!まだ後1匹残ってるだろ!」
「・・・疲れたから、あんた1人で十分でしょ」
「はぁ!?」



スタスタと去っていく背中に、イラっとして真横にあった木が一瞬にして灰になる
あれで無自覚だっていうんだから嫌になる
いつの間にか距離が近くなった支葵とあいつ
滅多に見られない感情を向きだした支葵を見るのもいいけど、もう俺はただ遠くから見てるだけはやめたんだ

(とばっちりはいつも俺)

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(WEB拍手で公開していた作品!連載の方の番外編ですね)