むにゃむにゃと寝言を言ってる英を横目でチラッと見てから、肌蹴たシャツのボタンを2つだけ留めて部屋を出る
自分で自分の行動を "よくやるよ、本当″と思いながらも暗い廊下を歩く
あいつとは深く関わらない方が良いと思ってる
身を滅ぼすだけだと、深く関われば俺もいずれ隠された闇に触れる事になるとわかってる



「・・・風邪引くぞ」



わかってはいるけど、ぽつんとテラスに立つの背中を見る度に俺は声をかけずにはいられない
俺の声に反応したは振り返ってふわりと小さく笑う



「今日はボタン、留めてるんだね」
「お前が顔赤くするからだろ?」
「・・・年頃の女の子の前でする格好じゃないもん」



拗ねるようにプイッと背を向けるその仕草が、踏み込むなと言い続けるもう1人の俺を消し去る
そっと近づいて後ろから抱き締めれば、小さな身体はすっぽりと俺の腕の中におさまる



「いつも思うけど、暁ってヴァンパイアなのに体温高いよね」
「お前が低すぎなんだって。俺が普通」
「暁がこうして抱き締めてくれるからいいもん」
「・・・あっそ」



いつからか俺が抱き締めても顔を赤くしなくなった
それは少し寂しい気もするが、それ以上に "俺という存在に慣れた″事に喜びを感じてる俺は末期だ



、また夢見たのか?」
「・・・イラナイ記憶は薄れてくのに、本当にイラナイ記憶はハッキリと残ってるなんて神様も意地悪だよね」



の冷たい手が俺の腕に触れる
最近、英が隠された過去を調べているのを知ってる
協力しろとは言わないあいつは、秘密を暴く事でかなりの危険が伴う事を承知なんだと思う

   ――― 俺は知っていて、ただ知らないフリをする

英がどれだけの覚悟を持ってるのか真意はわからない
だけど、関わるなと何も知らないと思われてる俺が言える言葉じゃない



「・・・純血になんて生まれたくなかった」



ぽつりと漏らしたの本音
純血種に逆らう事が出来るのは同じ純血種
そして、この黒主学園で玖蘭寮長に刃向かう権利を持っているのは "今は″腕の中にいるだけ



「・・・暁、もうあたしに関わらない方が良いよ」
「何言ってんだよ。俺の意思は俺が決める事だろ?」
「全部知ってるでしょ? ――― ・・・ささやかな平和は、もうすぐ崩れちゃうよ」



泣きそうな声に、の肩を掴んで正面からキツク抱き締めた
腕の中で "苦しいよ・・・″と小さく声が聞こえても構わずに強く抱き締めた



「・・・好きなんだよ」



伝えるつもりはなかった想いが零れ落ちる
腕の中で息を呑むに、予想通りの反応だと俺は小さく笑った



「しょうがないだろ?好きになっちまったんだから、今更離れられるかよ」
「・・・あ、かつき・・・っ」
が夢に見る結末になったとしても、俺はお前の傍にいる」
「・・・っいいの?」
「それが嫌だって言うなら、逃げようぜ。と一緒なら、追われる生活も退屈しないだろ」



ふざけたようにそう言えば、は小さく "・・・ばかっ″って言って俺の背中に腕を回した

不安なら俺に話せよ
怖いなら俺が傍にいてやる
だから1人で抱え込むなよ、1人で泣こうとするなよ



「―――― ・・・たとえどんな未来でも、俺はお前から離れないから」

(結末よりおまえを)

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