―― 純血種
気位の高い吸血鬼の中でも、更にプライドも高く気品に溢れた教養ある一族
簡単に近づく事さえ恐れ多い純血種
こうして僕が枢様のお傍にいられるのも、まさに僕が枢様に選ばれたからだ


「嫌だよね、自意識過剰な男って」
「・・・っ勝手に僕の部屋に入るなと言っただろ!!何暢気に人のベッドで・・・って、あぁぁ!!それは僕のマシュマロじゃないか!」
「ケチ!そんなケチだとモテないよ!」
「・・・お前はもう少し女としての自覚を持てよ!!」


はむはむと人のマシュマロを美味しそうに食べる姿に思わず頬が緩みそうになってキッと引き締める
スカートだと言うのに平気で人のベッドの上に寝転がって頬杖をつきながら、僕を見て嘲笑うその姿


「――― ・・・っ!!」


急に空気が変わりピシリと足元が凍った
僕は力を使ってない
それに、僕は一瞬で部屋を凍らせる事なんて出来ない


「あーあ、藍堂ってホント、枢命だよね」
「・・・枢様、命で・・・わ、るいか・・・!」
「別に?だけど妬けるよね、目の前にもいるのに、貴方の頭の中はいつだって "枢様″だもんね?」


浮かび上がるのは背筋がゾクッとするような、どんなに綺麗な吸血鬼でも形作る事は出来ない笑み


「――― ・・・純血種なら、目の前にいるでしょ?」
「・・・っ」


ふわりと一瞬で僕の目の前に来て、僕が動けないとわかっていて伸ばされた小さな手は僕の首筋に優しく触れる
本当は僕の気持ちをわかってる癖にそうやってお前は僕を試す
僕が誰を求めてるのか、誰を欲しているのか、口に出さなくても僕の血がそれを伝えてしまう



「愛してるよ、英 ―――― あんな形だけの婚約者の玖蘭枢よりも、ずっとね・・・」



そう言って艶のある笑みを浮かべられると、僕はいつだって逆らえない
枢様がどんなに目の前の婚約者を愛していると知っていても、枢様を裏切る行為だとわかっていても
僕は目の前にある甘い誘惑に逆らう事なんて出来ない

(裏切りと言う名の甘い蜜)

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