リボーンがまた変な格好で乱入した以外は何の問題もなく卒業式は終わった
3年間通った校舎ともお別れだと思うとやっぱり寂しくて誰もいなくなった教室に足を向けた
高校に進学してからリボーンはオレに "高校を卒業したらすぐにイタリアに行くからな″と告げられ、それから毎日が戦争だった・・・っ!
何が何でもマフィアになんてなりたくなかったし、オレにはオレの夢があったし、何よりもあんな危ない職業になんて就きたくない

誰もいない教室
窓の外からは別れを惜しむ声が聞こえて、オレはつい最近まで座っていた席に座った

半年前、今までしつこくイタリア行きを口にしていたリボーンが何も言わなくなった
それだけじゃなくて "お前の好きにしろ″なんて逆にオレは怖くなった
リボーンは目的の為には手段を選ばない
だけどオレの考えも虚しく、それからリボーンはただの家庭教師としてマフィアの事に関して一切口にしなくなった
更に言えばオレが選んだ大学への進学を応援してくれるというまさに在り得ない現象が起こった
まあそのお陰でオレは絶対に無理だと言われた大学への進学も決まり、こうして無事卒業出来たわけだけど・・・



「――――― ・・・やっぱりここにいた」



不意に柔らかい声が聞こえて振り返れば、教室の入り口にオレがあの大学を選んだ理由になった女の子の姿があった
長い黒髪が髪に揺れてふわりと微笑む姿を直視出来なくてパッと顔を背けた



「今日で本当に、この学校ともお別れだね」
「あ・・・う、うん・・・そう、だね」



小さな足音が静かな教室に響いて、彼女はオレの前の席に横向きに座った
もう二度とこうして座る事はないと思うとやっぱり寂しい
だけどこれでお別れじゃないんだ、大学へ行っても一緒にこうして授業を受けられるんだから・・・



「・・・綱吉、本当にいいの?」
「え?な、なにが?」



俯いたの横顔がまるで泣いているようでドキッとした



「・・・獄寺君も山本君も、留学するんでしょ?」
「あ・・・そ、れは・・・」
「山本君は高校別々になっちゃったけど、高校に入っても3人は仲良かったのにさ」
「・・・」



そうだ、獄寺君と山本は海外留学すると表向きはなってるけど実際はリボーンと共にイタリアへ行く
オレは反対したんだ
獄寺君は初めからその気だったけど、最後まで"マフィアごっこ″だと思っていた山本まで一緒に行くなんて
2人はオレがいつか正式なボンゴレ10代目としてイタリアへ行く事を信じ、リボーンと共にイタリアへ行く事を決めた、らしい
らしい、って言うのは獄寺君も山本もその事に対して一切オレには何も言わなかったから
それは2人の優しさだとわかっているけど、オレは日本を離れるつもりはない

   ――― せっかくと同じ大学に受かったのに、一緒に居たいと思って頑張った・・・だけ、ど・・・っ



「オ、オレは・・・っ」



顔を上げてハッと息を呑む
はオレを真っ直ぐに見て、ふわりと、まるで包み込むように優しい笑みを浮かべていた



「あたしは、綱吉が同じ大学を受けようとしてるって知った時嬉しかったよ」
「・・・?」
「途中であたし志望大学変えたでしょ?」
「え?あ、うん・・・どうしてだろうって、不思議だったけど」



途中で志望大学のランクを下げたに、担任がどうしてだと呼び出していたのを知ってる
そのお陰でオレが同じ大学に受かったようなものなんだけど・・・



「・・・あれ? "同じ大学受けようとしてるって知った時″って・・・知ってたの!?」



思わず机を叩いて立ち上がったオレに、少し驚きながらもは "うん、知ってたよ″と小さく笑った
少しだけ頬が赤くなっているのはオレの錯覚?
もしかしては、不審に思われない程度にオレのレベルに合わせた?

   ――― ・・・いやいやいや!そんなわけない!これだけモテるがオレなんかの為に夢を潰すわけない!

ぶんぶんと頭を振って、不思議そうに首を傾げたに "な、なんでもないよ!″と誤魔化すように笑った
何だか恥ずかしくなってストンッと椅子に腰を下ろす



「志望大学を途中で変更したのは、綱吉と一緒にいかったからだよ」
「そ、そうなんだ・・・」
「うん。本当はね、この高校を受けたのも綱吉が受けるって聞いたからなんだ」
「そ、そうなんだ・・・・・って、えぇ!?」



幻聴かと思える声にバッと顔を上げた
慣れたはずのこの距離が、すごく近い気がしてドキドキと心臓が煩い



「・・・そ、それって・・・」



まさか、そんな筈はないと冷静なオレが否定する
だけどふいと顔を背けたの頬が赤く染まっていたのは見間違いじゃ、ない・・・
混乱するオレを他所に音もなく立ち上がったに首を傾げた



「・・・何、してるの?」



オレの左側に立って、何だか満足そうに "うんうん″と頷くに益々オレは首を傾げた
見上げればパチッと絡む視線



「綱吉のこの場所、くれるんだったら・・・例えそれがイタリアでも、あたしは嬉しいな」
「・・・え?ちょ、それ・・・・えぇ!?」



照れたように微笑んだにオレは驚いて目を見開いた
まさか今から獄寺君達を追って留学だなんて無理な話だ
っていうか、あの2人がイタリアに行く事は獄寺君と山本とオレ、後はリボーンとビアンキしか知らない
どうしての口からイタリアという言葉が出てくるのか、ぐるぐると混乱する頭の中で "リボーン″という名前が浮かび上がりオレは頭を抱えた



「・・・まさか、リボーンから何か聞いた?っていうか言われた?」
「え?リボーン君?ううん、聞いてないよ?」
「え?ち、違うの?じゃあ、何でイタリアなの・・・?」



リボーンじゃないとすると、獄寺君や山本が言う筈ないしまさかビアンキが言う筈ない
更に混乱したオレにはにっこり笑って



「綱吉は気づいてないのかも知れないけど、時々ね、言ってたんだよ。独り言みたいに "イタリア・・・いや、でも・・・それは・・・″って」
「・・・えぇ!?オレ、そんな事言ってた!?」



頷いたにオレは恥ずかしくなってガシガシと頭を掻いた
迷わない筈がない
獄寺君も山本も大切な友達で、初めて出来た友達でもある
そんな2人が危ない世界に、それも命懸けの世界でオレを信じて待ち続けるなんて言われたら誰だって迷う
だけどと一緒に同じ大学に行きたいのも本音で、本当は今日告白しようなんて思ってた
大学進学が決まったオレは、どちらかの選択をしたつもりだったけど、本当は選択出来てない
どちらも大切で、どちらかひとつを選ぶ事はオレには出来ない・・・



「・・・自惚れかもしれないけど、もし綱吉があたしと同じ大学に行くために日本に残るなら」
「ちょ、?」



急にその場に座り込んだに、思わずオレも椅子を退けて座り込んだ
座り込んで膝を抱えたまま何も言わなくなってしまったの名前をそっと呼ぶ
小さく "綱吉・・・″とに呼ばれ "うん?″と返せば、は膝に顔を埋めたまま




「――――― ・・・イタリア、一緒に行こう?」




とんでもない爆弾を落としてくれた
一瞬本気で息が止まって、パシパシと瞬きを繰り返して、ジッとを見つめた



「綱吉の事、好きだから。・・・イタリアと日本で迷ってるなら・・・あたしが、イタリアに行くから・・・・っ笑ってよ、綱吉」



顔を上げたかと思えば行き成り抱きついてきた勢いに後ろの机に頭を打った
痛い痛いとパニックになりながらも、オレに抱きつくの肩が微かに震えている事に気付いた



・・・」
「綱吉の笑顔、好きだから・・・・その笑顔がなくなるなら、イタリアに行こうよ・・・」
「で、でも・・・イタリアに行ったら・・・っ」



嬉しいと思う、素直にの気持ちは嬉しいと思う
だけどイタリアに行けば必然的に平和な毎日とはかけ離れた生活になる
いつ死ぬかわからない
仲間や大切な友達の死が、すぐそこに迫っているそんな状況下の中で生きて行かなければならない
時には人を殺す事だってしなくちゃいけない
今まで普通の生活を送っていたのに、一度入ってしまえばその生活に戻る事は出来ない

   ――― ・・・オレがイタリアへ行く理由を知れば、はきっとオレと一緒に行くとは言ってくれないだろう



「・・・、その気持ちは凄い嬉しいけど・・・だけど・・・っ」



巻き込むわけにはいかないと、そう思うのに言葉に出来ない
オレはどちらか選ぶなんて出来ない
少しは、獄寺君達と一緒に未来を歩くのもいいかも知れないと思った事もある
それにあの2人はもう覚悟を持ってイタリア行きを決めて、未だにオレは選択したつもりだけど決められてない



「綱吉、一緒にイタリア行こうよ」



心が揺れる
が傍にいてくれると言うなら、オレが捨てたくないと思っている物は捨てなくて済む
いや、と普通の毎日を送る事は出来なくなるけどそれでもが傍にいてくれる



「・・・オレが・・・マ、フィアの・・・ボス、だって・・・言っても、は・・・一緒にイタリアに、行ってくれるの・・・?」



抱きしめたくなる腕をぐっと押さえる
お願いだから、一緒には行けないと言って欲しいと願う気持ち
それでも構わないと言って欲しいと願う気持ち
矛盾してると思うけど、自分で選択出来ない弱いオレには精一杯の言葉だった





「――――― ・・・あたしは綱吉だから、好きになったし、傍にいたいと思うんだよ」





言葉ひとつひとつが嬉しくて
危ないとわかっていても、それでも一緒に行くと言ってくれたが嬉しくて
思わず涙が零れた
ぎゅっと抱きしめたの身体も震えてて、オレ達は顔を見合わせて笑いながら泣いた

(君の隣、それがしあわせ)

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(スレツナじゃなくてスレてるとしたら絶対山本が似合うと思うけどかけねー!w)