「マーモン、知らないー?」
「僕は知らないよ」
「どこいったのかなぁ。せっかく王子が遊んであげようと思ったのに」
つまらなそうに頭の後ろで腕を組んで僕の部屋を出て行くベル
ドアを開けっ放しで出て行くのはいつもの事だから、僕はベッドから下りてドアを閉める
くるっと後ろを向けば、もぞもぞとベッドの下からが這い出してくる
「僕を巻き込むのはやめてって言ったよね」
「ベルの "お遊び″は並盛中の風紀委員を思い出すような "殺し合い″だから嫌なんだよー」
溜め息を吐いてベッドの上に戻れば、はへらっと笑ってベッドの上に上がってくる
毎回こうして僕の部屋に逃げてくるはベルのお気に入り
ぽふっと僕のお気に入りの枕に顔を埋めるに、僕は毎回文句を言おうと口を開くけど言えなくなる
「それに、マーモンの傍が一番落ち着くもん」
「・・・勝手にすれば」
ふいっと本に視線を戻した僕に "うん、勝手にするー″って言ってふにゃっと笑うに僕は弱い
認めたくないけど僕もの傍は落ち着くから
「ん〜っ!やっぱりあの時諦めなくてよかったなぁ」
「よく走り始めた飛行機に乗り込めたね。さすがの僕もビックリしたよ」
「自分でもよく乗り込めたよなぁって思うもん」
「痕、残ってる」
「ん?あぁ、何か残っちゃった」
うつ伏せに寝転ぶのニットの裾を捲くれば痛々しい傷がある
無理矢理走り出した飛行機に乗り込むような莫迦をするからだよと言えば "チャンスは自分で掴まないと!″なんてへらっと笑った
「そんなに僕に会いたかったの?」
「うむ!」
「・・・ふーん」
たった一度しか顔を合わせた事がないのに、それも会話をした覚えはない
そんな相手に会いたいと思うのも変だけど命懸けで飛行機に乗り込むはちょっと変わってる
リング争奪戦から3ヶ月
いつも僕の傍にいるから、いつの間にか僕もが傍に居るのが当たり前になった
これってもしかしての作戦?
それだったら大成功だよ、口には絶対に出さないけど
「マーモン、ここで残念なお知らせがあります」
「残念かどうかは僕が決めるよ」
「残念と思ってもらえなかったらあたし泣くかも知れない」
「・・・言ってみなよ、なに?」
ぱたん、と本を閉じてを見下ろす
枕に顔を埋めたままのに "苦しくないの?″って聞けば "胸が苦しいです″と返って来る
じゃあ顔上げればいいのにと思った瞬間がもぞもぞと顔を横へ向けた
「・・・リボーンの阿呆にね」
「うん」
「マーモンの所に居るってバレて、連れ戻されちゃいます。っていうか、今週末にこっち来るみたい・・・」
「・・・なにそれ」
3ヶ月も経ってからバレるわけない
きっとがここに来た時点で気づいたけれど今まで放っておいたって事
なのにどうして今更連れ戻すのかわからない
「・・・帰りたくないなぁ」
「帰さないよ」
「え?」
キョトン、としたの瞳が僕を見上げる
そんな事僕が許すわけない
今更連れ戻そうとするリボーンの考えはわからないけど、僕はを手放すつもりなんてないよ
「マーモン、あたしが帰ったら寂しい?」
「別に寂しくないよ」
「・・・」
「勘違いしないでよね。僕はを日本に帰すつもりはないよ」
「・・・嬉しいけどさ、相手はリボーンだよ?それに、一応あたしのお兄様はボンゴレ次期後継者だよ?」
「そんな事関係ないよ。沢田綱吉が次期後継者でも、は正式にボンゴレに入ったわけじゃないだから」
「そうだけど・・・」
「、携帯持ってる?」
「ん?持ってるよ」
「ちょっと貸して」
受け取ったの携帯を開いて、メモリーの中からリボーンの名前を探し出して電話をかけた
不安そうに僕を見るに "大丈夫、僕に任しなよ″と言って携帯を耳に当てた
数回の呼び出し音の後に聞きたくもないリボーンの声が僕の昔の名前を口にする
『どうせ用件はの事だろ』
「わかってるなら話は早いね。今更連れ戻すなんて、僕は認めないよ」
『あぁ、そういうと思ってたぜ。しょうがねぇから妥協案としてバイパー、を買え』
「ムム・・・なにそれ、ナメてるの?」
『オレは本気だ。を連れ戻されたくなかったら、そうだな・・・Sランク任務報酬の50倍でどうだ?』
「・・・」
『おまえがを買うなら、オレ達は今後一切の行動にたいして文句ひとつ言わねぇぞ』
意地でもを連れ戻す気だと、提示された金額が物語る
だけどリボーン、君にしては珍しく計算違いをしているよ
お金はこの世の何よりも大切なのは本当だけどね
「交渉成立だね、リボーン」
『・・・』
「その程度の金額を提示するなんてナメてるの?僕はを手放す気はないよ」
『・・・支払うって事か』
「当たり前だよ。指定口座は後でこの携帯にメールしてくれればすぐにでも振り込むよ」
何か言いたげなリボーンを無視して、もう交渉は成立したんだからと電話を切った
本当莫迦にしてる
あの程度の金額で僕がを手放すわけないよ
たとえ僕の全財産を提示されたって、今の僕はを手放すつもりはないんだからね
「・・・ね、ねぇマーモン・・・」
「安心しなよ。が何をしようと、もう向こうは干渉して来ないから」
「それは嬉しいんだけど・・・ "金額″とか "指定口座″とか "振り込む″とか、何だか不穏な単語が飛び出たんだけど・・・」
「あぁ、それは ――― ・・・」
携帯が鳴ってが手に取るよりも早く僕はメールを開く
興味津々に覗き込むと一緒にディスプレイを見れば、送り主はリボーンで指定口座の詳細が書かれていた
「・・・Sランク任務報酬、50倍?」
「気にする事ないよ。リボーンは僕が支払わないと思って提示した金額だからね」
「っていうかSランク任務の報酬ってのがまずわからないんだけど・・・」
「だから気にしなくていいよ。僕がこの口座に振り込めばそれで終わり」
さっそく自分の携帯からメールに書かれていた口座に指定金額を振り込む
どうせメールを送って来たのも半信半疑だったからだと思う
リボーンが本気じゃなかったとしても、振込みを済ました今はもうは僕のものだよ
「マーモンと、ずっと一緒・・・」
そう言ってはふにゃっと笑った
この笑顔を失うなら、あの程度の金額、本当莫迦げてるよ
「ずっと傍にいてね?」
「当たり前だよ」
何だかの作戦勝ちのような気がするけど、もうそれでいいよ
いつの間にか当たり前になってたんだから
僕もそろそろ、認めてあげる
(ほら、その笑顔)
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(マーモン死んだとかありえないというか信じたくないと言うか、むしろマーモン女の子・・・?w)