たくさんの想いを胸にしまって
何もかもを、無かった事にして
時間を戻せたら・・・
そう、切に思ったのは初めてかもしれない
『・・え?・・・俺・・・、・・?え?』
困惑して、何が起こってるのか判らないと言った先生の顔
今でも、ハッキリ覚えてる
まだ日が昇る前
ベットの上で、お互い何も身に纏ってない
その状況が、何を意味してるのかくらい判ってて
きっと、一生懸命記憶を手繰り寄せてるんだと思う
そのせいか、眉間に皺が出来てるし
すっぽり抜けた記憶を手繰り寄せ、それでも曖昧な記憶にイライラして
それでも、浮かんできた記憶に青ざめる先生
目の前に居る先生は、この状況をどにかしようと必死になってて
あたしだって、慌てなきゃいけないのに
それなのに、何だかおかしくて
自然に漏れた笑みに、目の前の先生は目を見開いてた
『あたしから、誘ったから』
『え?』
あたしの言葉に、心底驚いた顔をした先生
信じられないって、そんな顔した先生に
やっぱり、笑みが漏れた
『無理やり、家に入れてもらったんですよ。先生、かなり酔っててから』
『・・・・・?』
『断られたけど、無理にって言ったのはあたし』
『・・・・』
信じられないって顔のまま、静かにあたしの話を聞いてる先生
真っ直ぐに”何言ってるの?”って訴えてくる先生の視線が痛くて・・・耐えられなくて
わざと、何も纏ってないと判っていてベットから出た
『――― っ!』
パッと視線を逸らし背中を向けた先生に、クスッと笑って
脱ぎっぱなしで放ってあった服に手を伸ばす
『なんで視線逸らすんですか?』
『・・・』
『ふぅ・・・そんなに後悔しなくても良いじゃないですか』
『どういう、事?』
『そんな、真面目に抱いてくださいって言ったわけじゃないんだから』
上着に手を伸ばした時、バッと振り向いた先生
その先生は、今までに見たこと無い顔してて
もう、駄目だって
もう、戻れないって
ただ、忘れてくださいって言えば良いのに・・・
そんな事、言えるわけ無くって
『ただの、遊びじゃないですか。・・・確かに、生徒に手を出した事は後ろめたいかもしれないですけどね?』
『・・・それ、本気で言ってるの?』
もう、駄目だって
もう、戻れないって
ただ、忘れてくださいって言えば良いのに・・・
そんな事、言えるわけ無くって
『それ以外に、何だって言うんですか?』
言った瞬間の先生の顔は
きっと、一生忘れられないと思った
『帰りますね。明日・・あっ、今日ですけど。任務あるんでしたよね?遅刻、しないでくださいよー?・・・・カカシ、先生』
名前を呼ばれた気がしたけど、振り返る程の勇気は無かった
溢れてくる熱いものを堪えられなくて
ただ、無我夢中で先生の家を出た
ずっと、好きだった
先生の事
だけど、違いすぎるから・・・
あたしは下忍で・・・、先生の部下で
先生は上忍で・・・、あたしの先生で
そう考えても、違いすぎるから・・
酔った先生に、酔った勢いだと判ってても誘われた事は嬉しかった
だから、拒絶はしなかった
だけど、あの時の先生の顔を見てらさ
嬉しさなんて、どっかに行っちゃったよ
これで良いんだって・・・
そう、何度も言い聞かせて
叶う事の無い恋を今
心の奥深くにしまい込んだ・・・
(強がりな私の精一杯の嘘)
>> 戻る
(カカシ先生は何だかんだいって初心希望したいなぁ)