、これはなに?」
「離れた人と会話が出来る、携帯電話って言うんだよ」
「じゃあこれは?」
「デジカメって言って、うーん・・・絵巻みたいなものかな?」
の世界の物は見ていて、とても、おもしろいよ!」
「・・・あ、そう」



無邪気に笑う白龍にそろそろ殺意を覚える
こちらの世界に渡った時、手に持っていたのは旅行バックであって望美ちゃんよりもずっと色々なものを持ってる
持って来て良かったと思えるものから何で持って来たんだろう・・・と思うものまで様々だ



「って、白龍?遊ぶのはいいけど、壊さないでね?」
「これはどうやって使うの?は、時々これを使っているよね?」
「旅の記念に、ね」



デジカメを興味津々な顔で見てる白龍は可愛い
だけど、だけどだね
明日の予定を確認して、今後の事を話し合って、夜も更けたから寝ようと言って解散してから軽く3時間は経ってますよ?
向こうの世界の荷物をあたしは今までみんなの前で開いた事はない
だって開いたりなんかしたら質問攻めにあうに決まってる
特に景時さんなんて発明大好きだから、どういう原理なのかとか専門的なことまで聞いてきそうだし
だから今日もみんなが寝た頃を見計らって少し整理をしよう、と荷物を半分くらい出した時に悲劇はやってきた





+++





とことこ、と可愛らしい足音がしてすぐにそれが白龍の物だとわかった
白龍はいつも望美ちゃんと一緒に寝ているからトイレにでも起きたのかと、たいして気にも止めなかった
それなのに今日に限ってこの白龍様はあたしの部屋の前でその可愛らしい足音を止めた



・・・起きている?」



遠慮がちにかけられた声に溜め息ひとつ
同時に珍しい、とあたしは立ち上がって襖を開けたわけだがそれがいけなかった



「・・・ど、どした?」
・・・っ」



ぽろぽろと涙を流し抱きついてきた白龍にはさすがに慌てた
白龍は悲しそうな顔をする事はあっても涙を流す事は今までになかった・・・うん、あたしが知らないだけかもしれないけど
声も出さずにただ涙を流す白龍にどうしたもんか、と取り合えず抱き上げて部屋に入れた



「白龍、どうしたの?」
「わからない・・・。私は、人ではないから・・・」
「うん、あたしはもっと判らないよ白龍」



膝の上に乗せて、ぽんぽんと背中を擦って落ち着かせる自分は母親か?
望美ちゃんの悲しい気持ちでも流れてきたのか
それとも八葉の誰かの悲しい気持ちが流れてきたのか
案外神様も大変だ、と溜め息ひとつ



「白龍、口開けてみ?」
「え?」
「ほれ、これでも食べて落ち着きなさいな」



がさっとバックの中にあった袋から飴玉をひとつ取り出して、ぽいっと口を開けた白龍の口の中に放り込む
ぱしぱしっと不思議そうに瞬きをして、すぐに白龍はぱぁっと笑顔になる
やっぱり神様とはいえ中身は子供だなぁと自然と頬が緩んだ



「すごく、甘い。それに、すごく柔らかい。、これはなに?」
「ソフトキャンディーって言うんだけど、まあ柔らかい飴みたいなものかな」
「美味しいよ、!すごく甘くて、の気のようだよ!」
「・・・そ、それはどうも」



喜んでいいのかわからない例えに、あたしは曖昧に笑って白龍の銀色の髪を梳く
羨ましい程にさらさらで綺麗なこの髪は神様の特権?



、眠りを邪魔してしまってごめんなさい」
「うん?いいよ、まだ寝てなかったし」
「何をしていたの?」
「荷物の整理を少し、ね」



ハッとなった時には既に時遅し
向こうの世界の物が散らかる後ろを見た白龍の瞳が、確かに輝いたのをあたしは見た・・・っ





+++





それから、これはなに?それはなに?と質問攻めにあったのは言うまでもない
そろそろ外が明るくなってるのは気のせいだと思いたい・・・



、眠い?」



布団の上に横になってうっつらうっつら夢の世界に旅立ちそうなあたし
そりゃあんた眠いよ
今日は昼前に出発なのに、これじゃあ道中で確実に歩きながらでも寝る自信がある



「眠るなら服を着ないと、人の身には寒いと感じるよ?」
「大丈夫だよー・・・いつも、寝る時はこの格好だから。それに、眠る時は寒いくらいが丁度いいのだよ」
「そうなの?人の身は難しいね」
「そーだねぇ」



いやただ単にあたしが布団に包まって眠っていたいだけで
寒ければ自然と小さくなるから、っていう理由なだけだけどね
一度だけ九郎さんにこの格好で寝てる所を発見されて、そりゃもう半日正座でお説教を食らった
別に1人部屋なんだし、その日はたまたま・・・本当にたまたま寝坊しただけでいつもは誰よりも早起きなあたし
だからキャミとパンツで寝たって別に問題はないんだよ
この時代・・・というか世界?は男が女の部屋に無断で入るのは御法度に近いみたいだしね




「・・・ん〜?」
「私もここで寝てもいい?と、一緒に眠りたい」
「どーぞー?」
「本当?」
「ほれ、おいで」



既に目蓋がくっ付きそうなまま、掛け布団を少し捲くれば布の擦れる音がした後スッと隣に人の温もり
小さな白龍はホントに可愛いなぁと思いつつ抱きついてきた白龍を抱き締める



、人の肌は暖かいね」
「ん、そうだねぇ」
「こうしているとすごく、温かいよ。人の身は、こうして肌を合わせる事が出来て私は嬉しいよ!」
「ん〜・・・」



もうわかったから寝よう?とあたしは目を閉じた
今日は早起きできないけど、どうせ起こしに来るのは朔ちゃんか望美ちゃんだろうと深くは考えなかった


  ――― ホント、失敗ばっかりだ・・・


翌朝、寝坊したあたしを起こしに来るのが弁慶さんだなんて・・・
未来を見る事のできないあたしが予想できるわけがない!!

(ひとはだ)

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(もふもふ、いぇす自己満足!)